腸穿孔による腹腔内膿瘍かと思いきや、腹腔外膿瘍でした。いや実はまだ治療途中。

こんにちわ、しげぞうです。

奨学金返済のため地方勤務中、パワー系メンズ

趣味は筋トレ、外科専攻医ローテ中です。

 

今回の経験症例は難しいなーと思いました。

特に、診断の面で難しい。(‘Д’)

重症心身障害児(以降、重心)の患者さんが

急性に腹部膨満と腹痛を主訴で救急搬送された症例です。

もともと前医では、腸管穿孔疑いで紹介でした。

例のごとく、前医の診断は信用しないところから始めます。

事前情報で、僕みたいなレベルだと固定観念が生まれるし、

誤診につながりますからね、怖い。

どういう風にすすめていったのか。

救急外来での診断・対応~オペ室まで

そもそも、重心で、年齢は20歳前後

以前に低酸素血症による脳幹障害を認めており、

全身の拘縮が本当に酷いんですよね。

ルートも24Gの細いのが入ってます。

こんなんね、拘縮してるから十分補液も出来てるのか信用ならんかったです。

とりあえず、追加でルートを取り、2本になりました。

バイタルの整理です。

血圧は130/90、意識は正直評価不能

脈拍は90,SpO2:95(酸素1L、FiO2:25)

気管喉頭分離されており、気管切開で呼吸管理されていますが

自発はあり、普段はO2:0.25L程度の吹き流しです。

そんな崩れている様子はなかったですね。

ただ、食事十分でない可能性と腸管穿孔疑いを考慮し

輸液は300ml/hポンプで投与し始めてます。

腹部の所見ですが、

腹部は膨満し、なんなら緊満しています。

下腹部左側よりに発赤を認めており、

腸蠕動音は亢進気味、機械音などはないです。

ちょっと左には虫垂炎の手術痕がありましたね。

圧痛とかは正直よくわかりません。

痛くて、ずっと小刻みに震えてるんですよね。かわいそうに。

腹部エコーもしましたところ

なんとなーく、膿瘍腔のような所見が認められます。

しかも、膀胱周囲から後腹膜にかけて

はっきりは見えませんが、

腹膜壁の肥厚、そぞうな内部エコーを伴った膿瘍腔です。

ただ、そこまでlowかと言われるとはっきりしません。

腸管蠕動や外腸骨動脈も確認しており、

腹腔内にあるように見えました。

前医でのCTでは、膿瘍腔のような所見が

後腹膜から腹腔内に交通を伴っているように見えます。

おそらく、直腸に穿孔があって漏れているんでないか。

な?

と思いまして、手術の準備。

腹腔内ドレナージして洗浄。

人工肛門かなー。という予想です。

さて、オペ開始です。

オペ室で腹腔内膿瘍は確認できず。

下腹部正中切開で、縦切りにして広げました。

まず、かなり筋層の肥厚が強い。

気にはなるけど、どんどんすすめます。

発赤もあるし、膀胱周囲~後腹膜腔に膿瘍があるんやろうな

と思いながら、いよいよ開腹です。

腸管の拡張が著明で、溢れでてきました。

どんどん腸を引っ張り出して膿瘍があるか確認します。

あれ、ないぞ。

どんどん検索しても、まったく膿瘍のような明らかな膿はないですし、

腸液の漏れによる感染所見、べらーくのような白苔もありません。

おかしい。

外から見ると、感染徴候のような所見もあるし

エコーやCTでも膿瘍があるように見えたのに。

骨盤腔までも確認しましたが、汚染はありません。

これはよくわからず、術中にエコーで評価しました。

もちろん、腹腔内にエコーをつっこんでです。

後腹膜下にエコーで、

術前に見えたような粗造な所見があります。

ここに膿瘍が隠れとんやろうか。

と思い、18G針で穿刺しましたが何も引けません。

腹直筋の前哨にも同様にエコーを当てまして

肥厚が強いように見えるということで、

スプリットしていきました。

しかし、結果はこれも膿瘍はなし。

釈然としないまま、人工肛門の造設にとりかかります。

術後はICUに入室しました。

ICU管理中に腹腔外膿瘍の確認あり。

熱型やWBC・CRPがなかなかすっきり改善しないまま3日が経ちました。

エコーで定期的に評価し、

粗造なエコー像がLOWになってきたように思えます。

明らかに腹腔外で、膀胱の前面から鼠径部付近まで

交通した膿瘍腔が確認できます。

これを、穿刺。

膿出てきてくれーと思いながら刺しました。

すると、嫌気性の臭いががっつりする膿瘍が出てきました。

しかも、かなり大きいcavityで洗浄がたくさん必要になるものでした。

嫌気培養を合わせて培養の提出です。

まだ結果は出ていませんが、これが今回のメインだろうと思います。

今後の経過に期待ですね。

まとめ

腸管穿孔による腹腔内膿瘍を疑いましたが、

後腹膜腔から腹腔外に膿瘍をつくったことで

腹壁が押されていたんだろうという症例を経験しました。

膿瘍が小さく、膿になって粘調度が高いので穿刺しても

吸引できなかったんでしょうか。

後腹膜に固定された腸管に穿通や穿孔があって

後腹膜に菌を供給しているんでしょうか。

まだはっきりよくわかりませんが、

最初の画像評価がどれだけ大事か。

勉強してもしても自信もってやれないなーと思いましたね。

人工肛門の造設も本当に必要だったのだろうか。

腸管の安静と交通の原因検索のためにも

間違っていないと思いますが。

難しくてよくわからないまま時が過ぎていきますね。

とりあえず、膿瘍のドレナージが出来ているのでこれから改善がみられることに期待しましょう。

 

以上です、ありがとうございました。

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